データ
モデル名:松本ピアノ モデル名 試作器(おそらく160㎝と思われる)
製造年:1937年製
製造国:日本 君津製
張弦方法:通常張弦(アリコート、デュープレックススケール無し)
フロント側:低音側~中音 アグラフ、高音部 カポダストロバー
ピン仕様:オープンフレーム
アクション仕様:シュワンダー式アクション
ペダル:2本
鍵盤:88鍵(白鍵:象牙 黒鍵:黒檀)
外装:黒艶(修復済み外装)
松本ピアノ・オルガン保存会: http://matsumotopianohozon.livedoor.blog/
記念すべき第10回は国産ピアノ黎明期の御三家として明治時代に始まり平成まで親子三代、地元千葉の工房でピアノを作っていた。松本ピアノが実験的に試作し市販されることはなかった2台の幻のプロトタイプのうち一台を収録する機会に恵まれた。
今回のピアノは2代目松本新治作のプロトタイプである、ぱっと見の外観で戦前のグロトリアンをコピーしているのが譜面台の透かし彫りデザインから見て取れた。一般には出回らなかった超貴重な楽器、まずは各部のデザインをチェック外観からグロトリアンを参考にしていることは分かっていたがフレームのデザイン、二本に分けられた突上棒まできっちりグロトリアンのモデル160が再現されていた。
この楽器は二代目新治が作り新治の息子で三代目の新一が修復を手掛けており君津市のしっかりとした管理により外装中身とも良好なコンディションを保っていた。しかしあまり使われていないピアノらしく楽器が眠っているような印象。
ちょっと弾きこんでみると鳴るようになってきた。確かにグロトリアンを参考にしているだけありかなり似た音が出ている。しかし正直なところ楽器本来のポテンシャルの6割程度の音しか出ていないような印象を受けた。君津市の保存会のコレクション収蔵台数の多さに因るのだろうが修復されてから整音整調にあまり時間が割かれていないような感じである。
弾き心地もムラがありシュワンダー式の悪いところが目立つ感じになってしまっている、調整すれば見違えるほどいい音が出そうなポテンシャルを感じるだけに非常に残念である。
今回は自分の予算と時間の関係上叶わなかったが、是非次回はしっかり調整された状態のピアノで再収録したいものである。国産ピアノの先駆けの一つである松本ピアノの本当の『スィートトーン』をお届けしたい。
譜面台の透かし彫りの意匠、ペダルの形状等グロトリアンのコピーである。ロゴが無ければはっきり言って区別がつかないレベルである。
グロトリアン160特有の二本に分かれた突上棒まで見事に再現されている。フレーム形状も瓜二つこの写真だけ見たらグロトリアンと思ってしまう。
オープンフレーム方式、中音域のアグラフの並びが低音側が曲線状に高音側が直線状になっているがこれもグロトリアン方式である。
唯一の違いと言ってもいいロゴマーク、ハープに刻まれるSMはS.MATSUMOTOの略である。創業者で初代新吉と二代目新治のイニシャルでもあり、松本ピアノの謳い文句『Sweet tone』のSでもある。
シュワンダー式のアクション。シュワンダー式としては一般的な構造。
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