モデル名:ホルーゲル モデル名 model.1号(173cm)
製造年:推定1935年前後製
製造国:東京 蒲田製
張弦方法:通常張弦
フロント側:低音~中音域 アグラフ 次高音~高音域 カポダストロバー
ピン仕様:総鉄骨フレーム
アクション仕様:エルツ式ダブルスプリング(レンナー製)
ペダル:2本
鍵盤:88鍵(白鍵:象牙 黒鍵:黒檀)
外装:黒艶消(修復外装)
記念すべき第30回目の楽器は小野ピアノ製造のホルーゲルです。
小野ピアノは1933年に小野好(よしみ)が設立した。スタインウェイやメーソン&ハムリン、エラール等の外国製ピアノの販売代理店をしつつ自社のブランドであるホルーゲルを作り上げました。1937年には日本ピアノ界の重鎮である大橋幡岩と杵淵直都を迎え入れて躍進します。今回の楽器は小野ピアノ創立してすぐの東京蒲田で造られた戦前製ホルーゲルになります。1941年には戦時疎開で湯河原へと移り戦後も1961年まで東京に戻ることなく神奈川で製造を続けていた、戦後製のものとは意匠が異なり非常に貴重な一台となります。
楽器を見てみるとまず第一印象、戦前のハンブルク・スタインウェイを忠実にコピーした楽器だというのが一目でわかります、同様のモデルを基本としている『ピアノを聴く動画第7回』で紹介したシュベスターと見比べてみると面白いと思います。
国産の名器の多くが外国製の模倣であったことから期待は膨らみます、実際弾いてみると非常に素直な楽器で鳴りも音質も申し分ない楽器で本物のスタインウェイと遜色のない楽器でした、シュベスター同様柔和な響きとクリアで伸びのある高音等ではスタインウェイとの違いを聴きとることが出来ます。
アクションも非常にスタインウェイの方式を真似ており同時代の国産ピアノの中では頭一つ弾き易く感じました。
後々、ホルーゲルはメイソン&ハムリンとスタインウェイを合体させたような楽器へと変化していきます、武蔵野音楽大学の楽器博物館にそのホルーゲルのフルコンサートピアノが現存しているので拝見してみたいものです(可能なら演奏も)。
アメリカ式の前に倒れる譜面台を備えている。ペダル幅が若干狭めである。外装のデザインはいたってオーソドックス。
ハンブルク・スタインウェイと瓜二つな鉄骨のデザイン。戦後型は低音側の横向きの鉄骨支柱がダンパーの後ろ側へと変わっている。
こちらもいたってオーソドックスなピン周り。設計的に特異な点はほとんど見当たらない。
ヒッチピン周り。戦前型のホルーゲルにはデュープレックススケールが搭載されていない。
ここがスタインウェイとの大きな差別点だろう、高音部はスタインウェイに比べ音に混ざりけが少なくクリアになっている。ちなみに戦後型ではデュープレックススケールが採用されている。
スタインウェイにそっくりなロゴマーク。シュベスターも同じデザインである。
鷲が書かれたホルーゲルのトレードマーク。
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