モデル名:プレイエル モデル名 model. 3 プチ・パトロン(220㎝)
製造年:1860年製
製造国:フランス パリ製
張弦方法:平行弦 総一本張り
フロント側:低音~次高音 アグラフ、高音 カポダストロバー
ピン仕様:半鉄骨 オープンフレーム
アクション仕様:シングルエスケープメントアクション
ペダル:2本
鍵盤:85鍵(白鍵:象牙 黒鍵:黒檀 )
外装:ローズウッド(シェラックニスによる艶出し仕上げ)
動画URL:https://youtu.be/-R8l5qgxwkw(2022年12月25日公開)
修復映像:バルロンジャパン様 https://youtu.be/p3DZ3dI01_w
撮影協力:サーラ・マサカ様 https://www.salamasaka.jp/
今回はついに東戸塚にある『サーラ・マサカ』さんでポストショパン時代のプレイエルを弾いてきました。 1860年製のこのプレイエルはショパンが晩年にパリで使っていたものと音域が違いますがほぼ同じ仕様の楽器になります。平行弦、半鉄骨、シングルアクションと旧式ピアノの要素満載の一台であり、今まで収録してきたピアノの中でスクウェアピアノを除いて最も古い様式のピアノになります。 北軽井沢にある日本におけるフランスピアノ修復の第一人者であるバルロン・ジャパンが修復を行った今回の楽器は丁寧にオリジナルを尊重したかたちで蘇らせています。 見た目の華麗さもさることながらその音の美しさといったら言葉にならないほどです。シングルエスケープメントアクションは現代のダブルエスケープメントアクションに慣れた人間には何とも弾き難く感じます。具体的には離鍵をシッカリ意識しないと音が抜けてしまいます、それだけなら弾くのにそんな苦労をしないのですがこの楽器の最も厄介なところは指が鍵盤から離れないように打鍵をしないと綺麗に鳴ってくれないのです。その結果、現代ピアノの比ではない恐ろしい程の集中力を指先に必要とします。 ショパン自身が『体調がすぐれたときはプレイエルをそうでないときはエラールを弾く』といっていた意味がこの神経を隅々まで張り巡らさないといけないこの楽器の特性が嫌でもわからせてくれます。 音の響きは平行弦のせいもあって分離がかなり良く、響きが立体的に鳴り嫌な混ざりはありません。この楽器でショパンの音楽を弾くと特にペダリングに関してはかなり多くの発見をさせてくれました。密度の濃い低音上に可憐な高音部が何とも美しく弾いていて非常に楽しくなる一台でした。
『サーラ・マサカ様』貴重な楽器を十分に楽しませていただきありがとうございました。
非常に旧式然とした外観。シンプルな譜面台と燭台の透かしだが気品に溢れている。
現代のピアノに比べ手前側に鉄骨が無いので厚みが薄くなっている。鍵盤蓋の象嵌などさり気ないところの装飾で魅せてくれるのはこの時代のピアノならでは。
旧式ピアノ然としたフロント部分。調整式カポダストロバーと総一本張りの弦、剥き出しのピン板の組み合わせ。半鉄骨なので当然ピン周りに鉄骨は無い。
近代のプレイエルとは違うイグナツ・プレイエル表記がある当時のロゴ。受賞歴などが誇らしげに記されている。
調整式カポダストロバーだがやはり現代のベーゼンドルファーなんかと比べると細くて頼りなく感じる。
弦は総一本張りである。弦のヒッチピンにひっかける玉の形もオリジナルを再現しているバルロン・ジャパンさんのこだわりが光るとこである。
細いバーが響板の柾目と垂直に張られている。半鉄骨ピアノのフレームは一体成形でないのでこのバーは修復時は鉄骨から外せるようになっている。
音量も現代のピアノ程大きくはないのでダンパーも小振り。
井桁に組まれた支柱。鉄骨が華奢なので木枠はかなりしっかりしている。
美しい彫刻の脚。フランスピアノは現代のピアノの様にボルトで固定するのではなく、ねじ式で本体に取り付けられている。
ペダルは軽く操作性は良いが現代のピアノとは全く響き方が違うので使用法は大きく変わる。
運搬用の大屋根のストッパーに施された装飾。
大屋根の内側に埋め込まれた当時のメダル。『1855年パリ万博博覧会 産業、美術工芸 褒章メダル プレイエル』と書かれていて
バルロンジャパンさんの丁寧な修復により美しい姿に復元されている。塗装も当時と同じ材料で丁寧に薄く何層も手作業で塗られている。
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