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執筆者の写真西野 智也

【《ピアノを聴く動画》使用ピアノ紹介】第58回タローネ

更新日:2023年6月29日


モデル名:タローネ モデル名 モデル180(180㎝)

製造年:1967年製

製造国:イタリア ミラノ製

張弦方法:交差弦 一本張りとターン張りの組み合わせ

フロント側:低音~中低音 アグラフ、次高音~高音 カポダストロバー

ピン仕様:総鉄骨

アクション仕様:ダブルスプリングアクション(シュワンダー製)

ペダル:3本

鍵盤:88鍵(白鍵:象牙 黒鍵:アクリル )

外装:ウォールナット オリジナル外装

動画URL:https://youtu.be/2A8XoK9jXHI (2023年6月7日公開予定) 撮影協力:ピアノプラザ群馬


今回は久しぶりに群馬に遠征に行ってきました。お目当ては日本に数台位しかないと思われる知る人ぞ知るイタリアの手工芸ピアノ『タローネ』。 まずは簡単に『タローネ』の解説。 創業者アウグスト・タローネは1895年生まれ。 20世紀初頭、イタリアにはほとんどピアノメーカーが無い状態でした。ピアノ技術者としてブリュートナーやベヒシュタインで研鑽を積むが自身の理想とするピアノの音ではないという思いからタローネは、ピアノの発明国イタリアの威信を取り戻すべく、自国に世界的なピアノの名器の製作を志し、誰も聞いた事のない音色を標榜するようになります。 そして、1948年に「タローネ」の第一号アップライトピアノを完成させます。 その後、タローネは1982年に没して生産を終了するまでに傑出したグランドとアップライトを世に送り出しました。 その総生産台数は、一説には750台、または、500台程度とも言われており、その品質管理は恐ろしい程に徹底しており製作後一年経って満足のいったものだけが署名され市場に出される、それ以外の楽器は破棄されるほどのものだったそうで全ての楽器がタローネの入魂の作品である事が窺えます。 またタローネは、イタリア往年の巨匠アルトゥーロ・ベネディッティ・ミケランジェリの専属の調律師としてミケランジェリが若い頃から世界ツアーに帯同し、名声を博しました。 その名声はミケランジェリ来日と共に日本にも知られ、ヤマハがタローネを招聘して、コンサートグランドCFとC3を開発に尽力した事はよく知られています。 そんなタローネのピアノですが印象としては正にイタリアのオペラ歌手を思わせるような明るく伸びやかな音色です。タローネ本人も『私のピアノはイタリア語で歌う』と語ったようにフランスピアノやドイツピアノには無い軽やかさと明るさを持っています。

シュワンダーのダブルスプリングアクションは弾き応えのある感触で反応は非常に良好。特性としては弱音で囁くより朗々と歌いこむとでこのピアノの良さが引き出せる印象でした。

ピアノプラザ群馬様今回も素晴らしいピアノを楽しませて頂きました。


タローネ

シンプルなロゴに美しい木目の一台。イタリア製らしく譜面台もお洒落な造形をしている。


タローネ

フレームの形状に若干ベーゼンドルファーの影響を感じる。アグラフとカポの組み合わせでオーソドックスな設計。


タローネ

オーソドックスなフレームのフロント部。次高音以降にカポとピンの間にアッパーブリッジがあり倍音を生み出している。


タローネ

特徴的な張弦方法。1.5本張りと筆者が勝手に呼んでいる一本張りとループ張りの組み合わせ。ガヴォーやファツィオリで採用されている。弦を真っすぐに張るための工夫が見られる。そして独立型のデュープレックススケールが設けられており響きの増強に一役買っている。


タローネ

放射型の支柱。そしてスタインウェイのトレブルベルの様なものが付いている。フレームと繋がっており恐らく筐体を鳴らすための工夫と思われる。


タローネ

面白い形状の駒。


タローネ

このピアノの特徴的な部分でもある響板の縁部分。写真だとわかり難いが縁が薄くなっている、タローネ自身が『ピアノは生き物である』と語る通り一台一台響板が最適化されている



タローネ

僅か三桁のシリアルナンバー。総生産台数はアップライトとグランド含めて1000台未満なのでかなり貴重なピアノである。


タローネ

シュワンダー製のダブルスプリングアクション。このピアノが作られた当時ではシュワンダーのダブルスプリングは珍しい。

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