モデル名:エラール モデル名 縦型ピアノ(113㎝)
製造年:1843年製
製造国:フランス パリ製
張弦方法:総一本張り
フロント側:総アグラフ
ピン仕様:半鉄骨
アクション仕様:イギリス式アクション(エラール社製)
ペダル:1本
鍵盤:80鍵(白鍵:象牙 黒鍵:黒檀 )
外装:ローズウッド(オリジナル外装)
今回はエラールのピアニーノを収録してきました。
自分の大好きなメーカーの一つで登場回数も多いエラールですが今回も博物館級のお宝ピアノを収録してきました。
今回の楽器は『ピアニーノ』と呼ばれる小型ピアノになります。有名なものではショパンがマヨルカ島に持ち込んだ1838年製のプレイエルの物があります。
この『ピアニーノ』と現在では呼ばれるアップライトピアノの原型は思いの外近年に登場したものになります。事実、エラール社では1833年に製造番号を持たない試作型が作られました。正式に販売されるようになったのは1834年からと記されています。初期のピアニーノはF1~F7までの6オクターブと非常に小さなものでした。
今回の楽器は1843年製とエラールがアップライトピアノを作り始めて割とすぐの頃の楽器ということが分かります。音域はC1~G7まで拡大された6オクターブ半(80鍵)となっています。まず外見の印象ですが非常に小さくて驚きます高さはもちろん、横幅や奥行きも本当にコンパクトです。そしてこの時代のピアノは本当にゴージャスで細部にいたるまで職人の技が光っています。コンパクトなピアノですがかなりの存在感があり、それだけでこのピアノの来歴を窺い知ることが出来ます。
弾いてみるとやはり黎明期のアップライトピアノかなりの癖があります。しかし上手くコントロールしてあげると極上の音色を聴かせてくれます。アクションが旧式ピアノらしく非常に軽く、現代ピアノの半分くらいしか打鍵の深さがありません。その弾き心地と音色が相まってピアノ側が『この曲はこう弾くと良いよ』と導いてくれるような印象を受けます。この手の怪物級の楽器は演奏者が『こう弾きたい!』という意思を通り越して楽器が演奏者の意志を乗っ取てきます。
音はエラールらしい色香漂うまさしく音色ならぬ音香です。近代の塊のような音に慣れた耳には幾分か頼りなく感じてしまうかもしれませんが音の伸びが素晴らしく空間にずっと音が漂っているので音量よりもしっかり鳴っている印象を受けます。
著名なロマン派の作曲家が生きていた時代の博物館級の楽器。まさに音楽史の生き証人といえる楽器と対話することで多くの学びを得ることが出来ました。
パッと見た感じからただならぬ雰囲気を感じる。80鍵なので本当に小さく感じる。オリジナルで譜面台が折り畳みの物と鍵盤蓋とで二つ搭載されている。
エラールのロゴマーク。ロゴまで美しいのがフランスピアノらしい。
巻き線ごと巻かれたピン。現代のピアノではまずお目にかかれない巻かれ方である。
ねじ型の飾り脚はこの時代の流行なのか色々なメーカーで見ることができる。ほかにもモールにデザインラインが施されている。この複雑な造形を手仕事でやっているのだからもの凄く手間がかかっている。
再度に取り付けられた運搬用の取っ手。この取っ手や燭台は取れているピアノが少なくない中このピアノは良好な状態で残っている。
一本足のペダル。見た目が重視されていると思われ真ん中に付いているせいで非常に扱いにくい。この辺はやはり黎明期の楽器あるあるである。ちなみに真鍮プレートの裏側に木で補強されている作りになっている。
閉じても美しいのがフランスピアノの特徴。モールや脚などのさりげない仕上げが上品で美しい。
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